本プロジェクトは、新潟市の沿岸線に寄り添う砂丘地形、その頂部に建つ築40余年のマンションを舞台としたスケルトンリノベーションである。海抜約10mという、この地域では希少な高低差を活かして建てられた建物は、わずか地上4階でありながら、信濃川、日本海、飯豊山脈、そして市街地を一望できる、いわば‟新潟を凝縮したパノラマ”をもつ住まいである。しかし、その比類なき眺望とは裏腹に、40年以上前の住戸は現代の生活様式とはフィットしない古い設えに留まっていた。そこで内装と水回りをすべて解体し、RC造の躯体を露わにしたスケルトンリノベーションへと踏み切る。撤去不可能な柱梁の位置を正確に読み解きながら、ウォークインクローゼットや食品庫、床暖房、オーダーメイドキッチンといった現代的な住機能を組み込んでいくプロセスは、スケルトンでしか実現できない潔い再構築そのものである。特筆すべきは、年月を重ねた素材そのものを‟価値”として再評価している点だ。40余年を経過したコンクリートの質感には、時間だけが与えることを許される深い表情が刻まれている。この躯体のエイジングを意匠として積極的に取り組み、新築では生み得ないヴィンテージ感を空間へと昇華している。さらに、新たに施した仕上材--左官による天井・壁、オークのフローリング、ラタン(籐)パネルといった素朴で温度を感じる素材ーーが経年したコンクリートと絶妙な調和を生み、空間全体に柔らかな陰影と奥行きをもたらしている。新築偏重の日本の住宅文化において、このリノベーションは「ヴィンテージマンションを未来へつなぐ」という新たな選択肢を提示するものとなった。単なる改修ではなく、時間と素材、そして立地がもつポテンシャルを最大限に引き出した、成熟した空間の提案である。







Data&Credit
| Year | 2024年3月 |
|---|---|
| Location | 新潟市西区浦山 |
| Category | 住宅(マンション/アパート) |
| Structure | SRC造10階建て |
| Total area | 専有面積:71.50㎡(壁芯)+バルコニー面積:7.56㎡ |